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Interview

インタビュー

仲間がいるからできることがある──起業型協力隊で「横のつながり」を武器にした挑戦

「地方で起業したい。でも、1人で飛び込んで孤独につぶれてしまわないだろうか」
「協力隊に興味はあるけれど、任期が終わったあと、事業は続けられるんだろうか」

そんな不安を抱えながら、なかなか一歩を踏み出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな中、仲間とともに一歩を踏み出した人たちがいます。

2021年6月、映像クリエイターの小林敬輔さんは、茨城県北地域おこし協力隊「KENPOKU PROJECT E」に参加しました。独学で映像を学び、「行き当たりばったり」で走ってきたという小林さん。参考にできる先輩がほとんどいない中、手探りで道を切り拓いてきました。

2023年5月には、パティシエとして10年の経験を持つ齋藤幸枝さんが19番目のE隊員として着任。「飲食だけでは難しい」と知っていたからこそ、アップサイクルという軸を加えた事業を立ち上げました。

対照的なキャリアを歩んできたお二人が、なぜ同じプロジェクトにひかれたのか。E隊員同士のコラボレーションは、どうやって生まれたのか。そして、卒業後のリアルとは。

今回は、小林さんと齋藤さんによる対談形式で、「1人じゃない」挑戦のリアルを語っていただきました。

小林 敬輔(こばやし けいすけ)

令和3年6月着任。映像クリエイターとして、企業・行政向けPR動画やウェディングムービー事業を展開。大手企業など多数の映像制作実績を持つ。現在は大洗町でカフェも経営し、映像×飲食の複業スタイルで活動中。

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齋藤 幸枝(さいとう ゆきえ)

令和5年5月着任。パティシエとして10年の経験を持ち、アボカドのジュース&スイーツ専門店「AMAZING JUICE」を運営。アボカドを起点としたアップサイクルな新産業創出に取り組む。県事業「シン・いばらきメシ総選挙2024」大子町代表に選出。

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独学と10年修行──対照的なキャリアが県北を選んだ理由

小林さんと齋藤さんは、まったく異なるキャリアを歩んできました。独学で映像を学んだ小林さんと、パティシエとして10年修行した齋藤さん。けれども、お二人には共通点がありました。「自分のビジネスを持ち込める」という起業型ならではの魅力にひかれたのです。

堀下

そもそも、なぜKENPOKU PROJECT Eに応募されたんですか?

小林さん

前職の有休消化中に、Twitterで県北のアカウントに「僕、動画撮れるんで使っていいですよ」ってメッセージを送ったんです。その時に「KENPOKU PROJECT E」の制度の話を聞き、ぜひ受けたいと思いました。

映像制作は完全に独学。誰かに師事したこともない。「行き当たりばったりすぎて」と小林さんは笑います。

堀下

齋藤さんが、協力隊の中でもKENPOKU PROJECT Eを選んだ決め手は何でしたか?

齋藤さん

起業型っていうのが一番の決め手です。自分の事業をそのまま持ち込んで、地域活性化につなげられる。私の知る範囲では、そうした制度は珍しいな、と感じました。

齋藤さんは、パティシエとして10年修行した後、一度現場を離れています。派遣社員として働きながらパソコンスキルを身につけ、起業を体系的に学びました。

齋藤さん

私、お菓子しかつくったことがなくて、パソコンも使えなかったんです。専門性が高すぎて、他の経験が何もなかった。

10年の現場経験があるからこそ、飲食業の厳しさを知っている。だからこそ、アップサイクル(廃棄物の再利用)という軸を加え、差別化を図りました。

起業型地域おこし協力隊とは?──一般的な協力隊との違い

地域おこし協力隊には、大きく分けて「ミッション型」と「起業型」があります。


KENPOKU PROJECT Eの特徴は、「起業・複業が前提」であること。自分のビジネスを持ち込み、3年間で事業を育てながら、任期後の自立を目指します。


齋藤幸枝さんが小林さんのカフェ向けに開発したチーズケーキ

「横のつながり」が生んだコラボレーション──カフェのスイーツ開発

KENPOKU PROJECT Eの特徴の一つは、仲間同士の横のつながりです。単なる仲間ではなく、情報交換・相談・事業のコラボレーションが日常的に生まれる関係性。小林さんのカフェに並ぶチーズケーキは、まさにその象徴でした。

堀下

お二人のコラボレーションは、どういう経緯で始まったんですか?

小林さん

齋藤さんとは、PR動画制作をした地域のプロジェクトがきっかけでお会いしました。カフェをつくることになったとき、スイーツを出したいけど、自分は飲食のプロじゃない。知り合いに頼もうと思った時に、齋藤さんがいる!と思ったんです。

齋藤さん

何のためにつくるのか、お客さんはどんな人か。そこを聞いた上で、一緒に考えていきました。

地元の塩を使い、この土地ならではの味を追求した一品。隊員同士の「横のつながり」が、目に見えるカタチで実を結んでいます。


協力隊への挑戦を通じて学んだ「素直に頼る」という選択

10年間、パティシエとして腕を磨いてきた齋藤さん。自分の手でつくることにこだわってきました。けれども、KENPOKU PROJECT Eでの挑戦を通じて、大きな価値観の変化があったと言います。

堀下

齋藤さんは、KENPOKU PROJECT Eに挑戦して変わったことはありますか?

齋藤さん

ずっと、1人で全部やりたいと思ってたんです。自分でやった方が早いし、人に頼るのが申し訳なくて。

堀下

それが変わった?

齋藤さん

今は、自分でできることが限られてるって十分わかっているので。もう、素直に頼る。それしかないです。

パッケージデザインは別の隊員に依頼し、地域の特産品を使った商品開発にも取り組む。OBOGを含め40人を超える隊員がいるので、相談相手も協働パートナーも見つけやすい。

齋藤さん

自分だけで考えるんじゃなくて、地域を超えて仲間と絡めた新たなことにチャレンジする可能性がある。それって、すごい特権だなって思います。


小林さんや齋藤さんのように、
地域で事業を立ち上げたいと考え始めたら、
まずはKENPOKU PROJECT Eの全体像を知ることから始めませんか。
まずは募集要項を見てみる

卒業後のリアルを語る二人

「3年後どうなるか分からない」──これは、地域おこし協力隊を検討する人が感じやすい不安の一つです。小林さんはすでに任期を終えた「卒業生」。齋藤さんは取材時点で卒業間近。お二人は、その不安に正面から向き合っていました。

堀下

率直に聞きますが、卒業後の不安ってありますか?

小林さん

経費面のサポートがなくなるって、マジで恐怖でしかないですよ。

小林さんは笑い混じりに、こう話します。すでに任期を終えた「卒業生」として、今まさにその現実と向き合っています。

齋藤さん

焦りますよね。今までのありがたみがひしひしと……。

小林さん

キャッシュがなくなると、視野が狭くなって、メンタルがやられるんですよね。そこ、めっちゃ気をつけないと。

お二人は、同じ痛みを知る者同士の表情を浮かべていました。


それでも走り続ける理由

地域で仕事をつくり、雇用を生み出す。それは、会社員時代とはまったく違う覚悟を必要とします。けれども、小林さんの言葉には、迷いがありませんでした。

小林さん

止まったら生きていけない現状があるけど、止まる時は、諦める時だけだと思う。仕事の選択肢は増やしながらも、茨城が一番好きなので、茨城から離れるという選択肢はないです。

映像制作の仕事だけでは厳しい。だからカフェの運営も並行して走らせる。
「複業」という選択が、地域での挑戦を支えています。


未来の応募者へ

対談の終盤、お二人に未来の応募者へのメッセージを聞きました。

堀下

これからKENPOKU PROJECT Eに応募しようか迷っている人に、メッセージをお願いします

小林さん

ぶっちゃけ、この制度は挑戦するべきです。新しいことを始めるのに支援してもらえて、自分の好きなように動ける。これ以上の制度って、たぶん他にないんじゃないですか。

あまりにストレートな物言いに、齋藤さんが「わかりやすい(笑)」とツッコみます。

小林さん

でも本当にそうなんですよ。見つけた人は超ラッキー。先輩たちもいるし、興味を持った人は、まずOB・OGの活動を見てみてほしい。

齋藤さん

迷っている人は、実際に地域に足を運んでみてほしいです。普通、地域で何かやるってなったらゼロからじゃないですか。でもKENPOKU PROJECT Eには、行政の方も、先輩たちも仲間もいる。その環境は、なかなかないと思います。

(対談ここまで)


小林敬輔さんと齋藤幸枝さんの対談は、「横のつながり」が挑戦を支えることを教えてくれました。

独学で映像を学んだ小林さんは、先輩がほとんどいない中で手探りで道を切り拓いた。10年修行したパティシエの齋藤さんは、「素直に頼る」ことを学んだ。対照的なキャリアを歩んできたお二人が、同じカフェでスイーツ開発というコラボレーションを実現させた。

「キャッシュがなくなる恐怖」「止まったら生きていけない」──お二人は、卒業後のリアルを隠しませんでした。けれども、その言葉には悲壮感ではなく、覚悟がにじんでいました。

「1人で全部やらなくていい」という安心感が、挑戦を支えている。

それは、綺麗ごとではなく、お二人のリアルな実践から導かれた答えでした。

全国で活動する地域おこし協力隊は7,910人(令和6年度、総務省調べ)。約3人に1人が任期後に活動地以外へ転出する中、KENPOKU PROJECT Eでは多くの卒業生が事業を継続・地域に定着しています。その背景にあるのは、仲間同士の横のつながり。

挑戦する人がいてこそ、初めて生まれる未来です。

みなさんも、自分のスキルと経験が地域で活きる可能性を、少しだけ想像してみませんか。小さな一歩が、次の物語を紡ぎ始めるかもしれません。


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出典・参考資料